歴史小説


元ネタが『平家物語』なものを中心に読んでおります。
判官ものは多いのに、源頼朝を主役にすえた小説って殆どないんですよねえ。堂々の勝者よりも不遇の将の方が日本人の好みに合うということなのでしょうね。

 

◇平家物語  吉川英治 
大御所の作品ではありますが。これを長々と読むなら、源平盛衰記の原文を読んだ方が楽しいなあ。まあ現代語で読みたいという方にはお勧めかもしれません。

 

◇平家物語  森村誠一  
とんでもない創作部分も多いですが、推理作家ならではのオチはさすが。でも義経の造型に作者が酔い、河越の姫に手出しもせず手をつないで眠ったなど少女マンガ並みに美化されているので、終盤は背筋がムズがゆくなってきます。

 

◇双調平家物語  橋本 治  ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン!
他の平家ものが大体保元の乱あたりから書き起こしているのに比べ、原典の冒頭に「遠く異朝をとぶらへば」と叛臣として列挙されている「秦の趙高・漢の王モウ(草冠に「奔」)・梁の周伊・唐の禄山…」から延々と書き起こすあたり、鬼才というしかないです。いやもうその構想には恐れ入りました。完結を首を長くして待ってます。

 

平家  池宮彰一郎   (ノ`д´)ノ彡┻━┻
予想はしてたけど、こんなにも司馬『義経』をパクってるとは。NHKさん、2005年大河の原作にしなくて良かったですね。清盛と後白河・藤原長成の会話だけはオリジナルのようですが、現代をかなり持ちこんでおり、時代認識大幅不足で噴飯ものです。
類似指摘をしたら「盗作ではない」と強弁されたものの、文庫版発行にあたって相当な削除があるのはどうしてでしょうね〜。しかも今度は当サイトの指摘そのままに書換ですか〜。さすがですよねw

 

◇宮尾本平家物語  宮尾登美子 
 2005年大河ドラマの原作に決まったそうで。完結してから読む予定にしております。

 

◇源頼朝  吉川英治 
あらためて読み直してみると、「源頼朝」というよりは「源義経」にした方が良いような、、、。

 

◇源義経  村上元三 (´・ω・`)ショボーン
1966年に放送された大河ドラマ『源義経』の原作。義経美化の最右翼ではないでしょうか。梅えびらや馬眠りのエピソードが全部義経にすりかわってます。とっても潔癖で純真で悲しい義経。戦いを望まず、こんなにデキた義経なら滅んでいないと思うんですけどねえ。

 

◇義経  司馬遼太郎 ヽ(`Д´)ノウワーン
アンチ判官びいきの最たる作品。でもこれじゃ義経がただのスケベなだけのバカ。司馬遼ともあろう人がどうしてこんな駄作を書いたやら、という感じで、作者も最後は執筆に嫌気がさしたのか唐突な終わり方をしています。

 

◇源義経  三好京三 
頼朝が奥州を滅ぼす口実のために、義経はあえて平泉をめざしたという話。最後は反目した兄弟だが、実は頼朝と義経は心の奥で通いあっていたということがテーマなのでしょうけど。高橋克彦といい、東北の作家は義経北行説にこだわりますね。

 

◇源九郎義経  邦光史郎 
義経というタイトルのわりには、それと関係のない平治の乱の話が延々と続きます。主役の登場が遅すぎ。また誰が主役なのかわからない閑話が多すぎ。義経もこれじゃ単なる浮浪児じゃんヽ(`Д´)ノ

 

◇源義経  長部日出雄 (・∀・)イイ!!
大人びた部分と子供っぽさの同居など、義経の性格設定が個人的には一番しっくりきます。冷静な指摘が多く、余計なエピソードや人物がはぶかれているので、読みやすい。が、小説としてはやや評論的。京の大地震の際の義経の心理描写は秀逸。ラストはちょっと虚しいかも。

 

◇義経の母   安西篤子 (・∀・)イイ!!
いかにも女性作家の書いた歴史小説という感じ。義経周辺を扱おうとすると義経のキャラに引きずられる作品も多い中で、無理に義経を描こうとせず常盤のことに終始するのは好感が持てます。

 

 ◇源義経の妻   藪 景三 
吾妻鏡を基に史実で綴ろうとしているけれども、不自然でつじつまが合っていなかったりして…。義経妻の静御前に対する嫉妬がかなり怖いです。((;゚Д゚)ガクガクブルブル

 

◇もののふの大地−義経と河越一族−  堀 和久 
義経の妻とその一族・河越氏の話。それがテーマとはいえ、農業の小ざかしい知識に終始しすぎでストーリーとしてこなれてなく、義経も美化しすぎ。

 

◇蒲桜爛漫−源範頼−  堀 和久 
事柄の説明ばかりで小説になってないんですが。範頼がただの温和な傍観者で、主人公にする意味があるのかと小一時間(以下略。

 

◇蒼き蝦夷の血  今 東光 
中尊寺住職でもあった氏の描く奥州藤原氏四代の話。絶筆。書き急いだためか後半は盛衰記からの引用も多く、未完。現在進行中の話の中に過去と未来が混在し、同じ話が何度も繰り返されてひどく読みにくいです。通説を「誤り」と指摘し、自分の偏った考えを史実のごとく押しつけるのはどーだかなー。実はこの小説で本当に書きたかったことは、建礼門院と義経の密通エロ話だけではなかったのだろーかw 

 

◇炎立つ  高橋克彦 
これも奥州藤原氏四代の話。恥ずかしいくらいにとってもさわやかなヒーローとして藤原泰衡が描かれてます。大河ドラマ『炎立つ』の原作。義経北行説をめぐって最後はNHKとトラブったという、いわくつきの作品です。

 

◇夢・炎上  小池平和 
義経の庇護者であった藤原基成が描いた野望、という奥州の背景としては妥当な話。

 

◇平泉落日  小野寺公二 
頼朝の奥州征伐を平泉側から描いた話。架空の登場人物がかなり多く、また誰が主役なのか何がテーマなのかがイマイチ見えず。拷問だのグロい場面も多く、読後はゲンナリという感じです。あとがきで語っている「縄文人vs弥生人の闘いが奥州騒乱」というあたりをもっとストレートにテーマにすればいい感じなのに。

 

◇武蔵坊弁慶  富田常雄 
『義経記』を元ネタにした、弁慶が主役の話。妻子に対する弁慶の純情ぶりがほほえましいです。弁慶を主役にすると、どうしてもその対比として義経が不甲斐なくなるのはやむを得ないことなんでしょうね。

 

◇弁慶罷り通る  佐竹申伍 
史実がやたら説かれるかと思うと、『保元』〜『義経記』の虚構がワヤクチャに混在。弁慶を語る時点で、史実を云々しても意味ないと思うんですけどねえ。

 

◇北条政子  永井路子 
頼朝のセリフが何やらキモイ。が、『吾妻鏡』の咀嚼にかけてはこの方の右に出るものはいないでしょう。エピソードの小説への取りこみ方は思わず「(゚д゚)ウマー」とうならされます。

 

◇尼将軍 北条政子  桜田晋也 
やたらと史料名が挙げられ、小説なのか論文なのかという感じ。政子への嫌悪をひしひしと感じる作品。そんなに嫌いなら書かなきゃいいのに…。

 

◇絵巻  永井路子 (・∀・)イイ!!
静賢法印の架空の日記をおりまぜての短編集。平忠盛が本当に「ふひゃ、ふわ、ふわ」と笑ったかもしれない、と思わされるほどリアリティに満ちています。

 

◇噂の皇子   永井路子 
平安期の短編集。「双頭のヌエ(空偏に鳥)」では、源頼政の挙兵に対する解釈が色々な角度から展開され、うなずかされます。

 

◇二条院ノ讃岐   杉本苑子 
源頼政の娘・讃岐をスキャンダラスに扱った小説。「え゛! 治承寿永の乱ってそんなヨコシマなことが発端だったんですか?」という発想は面白いかも。ただ讃岐のことを聞き歩いている人物像が不明のままなことが歯がゆいです。

 

◇波のかたみ−清盛の妻−  永井路子 
保元の乱から壇ノ浦まで、清盛の室・時子の目線で物語が語らています。とにかくもう、この方の小説は巧いし的確です。ラストの潔さも(・∀・)イイ!!

 

◇俊寛  菊池 寛 
平家物語の中では俊寛は流刑の地から一人召還されず虚しく没したことになってますが、歴史的には恩赦の時に既に亡くなっていたという説も。この章を脚色し、たくましく現地人になった俊寛を創作してます。救いがあって(・∀・)イイ!! です。

 

◇炎環  永井路子 (・∀・)カコイイ!!
阿野全成・梶原景時・阿波局・北条義時を主役にすえた四部作。血が通った人物像が描かれています。「実朝暗殺の黒幕は三浦氏」を提唱し、歴史学者の目から鱗をはがした作品。「これほどまでに史料を読みこめたら気持ちいいだろうなあ」と思わされます。秀逸です。

 

◇右大臣実朝  太宰 治 
実朝郎従が、実朝没の20年後に当時を回想する話。実朝がまるで神か仏のように悟りきっていて、ちょっとナルシスト入ってます。

 

 

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