角川書店・編集担当者よりの回答

(前略)
 池宮彰一郎氏の『平家』と司馬遼太郎氏の『義経』につきまして、類似しているとのご指摘をいただきましたので、お送り頂きました例を拝見しました上で、お返事させていただきます。

 両作品で、同じ場面、エピソードが描かれております場合には、使用されている単語、あるいはごく短い表現について、確かに同一のものもあるようです。しかし、文章全体で見れば、著作権法上で問題になるような酷似には当たらないと思われます。

 また、すでに校了になっております下巻の末尾に、著者は参考文献として、司馬氏の『義経』をあげておられます。他の参考文献である吉川英治氏の『新・平家物語』、その他歴史研究者の著作、およびあえて参考文献としてあげてはいらっしゃいませんが、古典の『平家物語』などと同様に、ご自分の著作に利用されているのではないでしょうか。そうした意味では、ご指摘の箇所も、先人の業績を踏まえて新たな著作を行うという行為の中で、許される範囲を越えているとは思えないのですが。

 おそらく、多くの著者が、いわゆる古典だけではなく、その後現代に至るまでに発表された著作物を様々な形で利用してきたのではないでしょうか。ある場合は、文中の気に入った表現だったかもしれません。またある場合は場面の設定だったり、登場人物の名前だったりしたかもしれません。そうした先人の著作の上に成立した著作物がまた、次の著者たちに利用されていくのではないでしょうか。
 こうした過程を遡り、最初の発表がどこであったかを追及したり、一度発表された表現、アイディアを二度と使用してはならない、といった原理主義に陥ることは不毛だと考えます。
 著作権侵害にならない限り、先人の業績を利用することは認められるべきでしょう。さもないと、執筆活動そのもがこの世界に存在出来なくなってしまうと愚考いたします。同じ理由で、著作権侵害の解釈は厳密であらねばならないとも考えます。
 そして、弊社で刊行いたします『平家』については、こうした著作権上の問題は一切無いと自信を持っております。

(後略)


ハードカバー中巻の発行後、2003年6月にこういった回答を角川書店さん側からいただきました。
800年前の『平家物語』と、吉川『新平家』司馬『義経』を、参考文献として同列に扱うとは。
著作権法は作者の死後50年まで保護してることを、編集者たるものご存知ないとも思えませんが、、、。

しかしこのたび発売された『平家』文庫版では、類似部分が軒並み修正削除されています。
著作権法上何の問題もないなら書き直す必要もなかったのでは。
要するに、上記回答はまったくの詭弁であると言えましょう。

また池宮彰一郎氏はあとがきは書かない主義だそうですが、ハードカバー下巻には盗作騒動への言い訳めいたあとがきが付いてます。
参考文献には司馬遼太郎氏の『義経』や吉川英治氏の『新・平家物語』も載ってますけれども
小説が小説を参考文献にするなんて前代未聞でございますわな。
参考文献に載せればパクッてもいい、なんて悪しき前例は作っていただきたくないものです。ヽ(`Д´)ノ 

また元木泰雄氏著作に関しては「引用させていただいた部分も多い」と池宮氏は謝辞を述べていらっしゃいましたが
自分の文章との明確な区別がなされていない場合は「引用」じゃなくて「盗用」になると思うんですけどね。
※引用が許可される場合の例などについては文化庁のサイトへどうぞ→「著作権Q&A」

 

●池宮彰一郎「島津奔る」と司馬遼太郎「関ヶ原」の類似絶版 及び
池宮彰一郎「遁げろ家康」と司馬遼太郎「覇王の家」の類似絶版に関するサイトはこちら

●池宮彰一郎「絶塵の将」と司馬遼太郎「愛染明王」の類似に関するサイトはこちら


2003/07/12 up
2005/11/05 更新 

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